ゲーリュサック瓶による密度の測定
2023-09-10
概要
試料の密度はその体積と質量を知ることで計算できる。しかし複雑な形をした試料や粉体、気孔があるなどの場合体積を測定することは困難である。
ここでは密度が既知の液体を使用して測定できる道具としてゲーリュサックの瓶(比重瓶)を紹介する。
測定原理と手順
ステップ1
あらかじめ何も入っておらず乾燥した状態の瓶と蓋の質量\(m_{\rm bottle}\)を測定する。
ステップ2
瓶に溢れそうなほどある液体\(\rm{A}\)を入れる。その状態で蓋を挿すと蓋の中の管を液体が通り抜け、余分な液体は外に排出される。
溢れた液体を拭き取り質量\(m\)を測定する。液体の質量を\(m_{\rm A}\)としたら
\begin{equation}
m=m_{\rm bottle}+m_{\rm A}
\end{equation}
である。こうして満たされた液体の重さ\(m_{\rm A}\)を知ることができる。中に入った液体は一度取り出し瓶を乾燥させた状態にしておく。
ステップ3
ここで密度\(\rho_{\rm X}\)を測定したい試料\(\rm{X}\)を質量\(m_{\rm X}\)だけ用意する。何も入っていない乾燥された状態の瓶に試料を入れる(入った分を測定した方が楽)。
試料を入れた後改めて液体\(\rm{A}\)を入れて瓶を満たす。このとき全体の質量は
\begin{equation}
m^{’}=m_{\rm bottle}+m_{\rm X}+m_{\rm A}^{'} \label{(1)}
\end{equation}
で、試料を入れたあとの液体の質量\(m_{\rm A}^{'}\)を求める。
ステップ4
瓶の体積を\(V\)、液体\(\rm{A}\)の密度を\(\rho_{\rm A}\)、試料を入れた後に注いだ液体\(\rm{A}\)の体積を\(V_{\rm A}^{'}\)とすれば試料\(\rm{X}\)の密度は
\begin{equation}
\rho_{\rm X}
= \frac{m_{\rm X}}{V_{\rm X}}
= \frac{m_{\rm X}}{V-V_{\rm A}^{'}}
\end{equation}
となる。試料の体積は瓶の体積と注いだ液体の体積の差になる。定温条件下として試料を投入する前後で液体の密度は変わらないとすれば
\begin{equation}
\rho_{\rm X}
= \frac{m_{\rm X}}{\frac{m_{\rm A}}{\rho_{\rm A}}-\frac{m_{\rm A}^{'}}{\rho_{\rm A}}}
=\rho_{\rm A}\frac{m_{\rm X}}{m_{\rm A}-m_{\rm A}^{'}}
\end{equation}
を得る。特に液体が水であれば\(\rho_{\rm A}\simeq1\)として
\begin{equation}
\rho_{\rm X}=\frac{m_{\rm X}}{m_{\rm A}-m_{\rm A}^{'}}
\end{equation}
と質量を測定するだけで密度を簡単に求めることができる。
その他、注意など
温度について
一般に液体は温度によって密度が変化するので質量を測定したあと温度を測り、温度に依存した密度を使うとより正確に測定できる。
とは言ってもマイナーな液体を使うならあらかじめ調べておくか温度を一定に保つことを考える。
液体と試料の関係
できれば試料は液体に対して不溶で沈降するものが良い。溶けて混ざったり粉が少し浮いて蓋を挿すと試料もわずかに排出される。そのため測定値が大きく見積もられる。しかし、近似値としては有効なのでざっくり知りたければ問題はないと考える。
添加物によって不溶にしたり沈降させることができる。その場合添加物の密度がわかっていれば試料の密度が測定できる。